長く、暗い通路を歩きながら、私は今までにない緊張を押さえていた。
たまにすれ違う白衣の男たちが興味深げに、私に視線を落とした。
私はこれから2度目の対面をする男が起こした事件の新聞記事を、今一度思い起こしていた。
・・・・・・
そして身体を硬くして表情もない男が発した言葉が、何度も頭の中を巡った。
「ユ・リ」物語は中年にさしかかった男が、自分の恋人を自宅アパート前で、
笑みを浮かべながら2度車で轢き、死なせるという事件から始まる。
逮捕された男の異常な言動と行動に、精神鑑定を進めるうち、信じがたい驚愕の事実が。
まるで時計の秒針を進めるように、その男の時間は、周りより早く進んでいたのだ。
それは何秒、何分、何時間と加速していき・・・
混乱する男は徐々に押し黙るようになる。
極秘のうちにある病院に隔離された男が、恋人でもある病院の医師の要請で派遣された若き心理学者、涼子に一言だけ発した言葉
「ユ・リ」
これは名前なのか。それとも何かを意味する暗号なのか。
彼女にしか心開かない男を引き取るはめになった、涼子と男の間に奇妙な友情が芽生える反面、
この言葉をめぐり、様々な陰謀の渦が彼らを巻き込んでいく。
残酷な運命と、陰謀に翻弄される男を救うべく、賢明に闘う若き女性心理学者の、スリルとサスペンスに満ちた、悲しい結末をたどる友情の物語